ヘンゼルとグレーテル について考える

グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』は主人公の兄妹が継母に捨てられるところからストーリーの変化の兆しが現れます。この民衆物語が口承されていた16世紀以降、とくに19世紀に子捨は多かったそうです。そして、当時の妊娠中と出産時の女性の死亡率の高さから考えれば、家族の中に継母がいる状況は珍しくなかった。つまり、この兄妹の家族生活の状態は特殊なものではなく、その時代の日常生活の事実と一致していたといえます。
この話は両親による児童虐待のもっとも有名な例の一つと言われています。

ヘンゼルとグレーテルの二人を象徴的に考えると、ユング心理学でいうアニムス性(男性的要素)とアニマ性(女性的要素)を表しており、つまり人間そのもの、我々の「自我」であるといえます。そしてこの二人の幼い子供達が継母に家を追い出され、未知の森へ入っていき、再び家へ帰ってくるという話の流れから、母親(両親)からの自立、外での成長、成功をおさめて帰ってくる、という子供の成長自立を推進するように機能していると思われます。

継母と森の魔女は機能的には同一の存在であり、この二人の行動や性格はひとつの母親像を連想させます。たとえば、継母は幼い子供より自分を大事にするどころか、自分が生きるために本来守るべき幼い命までも絶とうとする。森の魔女は、甘いもので子供をつったり、子供を食べよう(殺そう)としたり、自分の欲求のために動き、考え、理性をもたない。このような行動や性質は「悪い母親」を典型的に表しているといえます。ヘンゼルとグレーテルが自立しようとする子供を表現しているならば、この継母と森の魔女はそれを妨げる悪い母親を表現しているのではないでしょうか。

木こりである父親も本来一家を守るという理想的父親とはほど遠く、気が弱く妻の言いなりになってしまう男性の象徴です。ただ子供のことは愛しており、子供たちが帰る場所として考えることができます。

鳥はこの物語の中で重要な役割を果たします。ヘンゼルが家に帰るための道しるべとして落としたパンを食べてしまう鳥たち、兄弟をお菓子の家へ導く白い小鳥、それに兄弟が父のいる家へ帰るときに助けてくれる白いカモ。ヘンゼルは家で両親の会話を聞いて泣くグレーテルにいつも「心配しなくていいよ、グレーテル、神様は僕たちを見捨てたりしないから」と言っていましたが、この鳥たちこそが神、もしくは神の使いであると考えられます。

道しるべとしてのパンを食べてしまったり、魔女の家へ誘導する鳥は神が与えた兄弟への試練のきっかけであり、白いカモは成長自立(魔女退治)した子供たちを無事に家に返してやるという、神からのご褒美であると考えれば納得がいきます。

このように、この登場人物たちは、すべて母親からの成長自立を促すように機能しています。言い換えれば、私たちは成長を余儀なくされたとき、母親から離れ、失敗を繰り返し、誰かの助けを得、危険や試練を乗り越えられたら、それによって得たものを携えて(立派に成長して)家に戻ることが許される、ということを教えてくれているのです。

そして愛情薄い母親(継母)と、危険を及ぼす悪い母親(森の魔女)は子供の成長とともに死んでしまうのです。

木こりの家は、現実の生活場所です。ヘンゼルとグレーテルにとっては、継母がいるという少々居心地の悪い、でも優しい父親がいるため離れがたい場所。読み手の人間にとっては、そろそろ独り立ちしろとせつかれる年頃の現実、といったところでしょうか。

森と木こりの家を結ぶ道は成長への過程です。自立への道は行きは不安を持ち、帰りは達成感を持ちます。森の奥の魔女の家は、成長のために乗り越えなければいけない、神が与えた試練です。そこに魔女(悪い母親像)がいるということは、人が成長する為にもっとも乗り越えなけばいけない、自己の深いところにいる母親との対決であるといえます。その対決に勝つためには、ヘンゼルが象徴するアニムス性(たとえば論理性、知性)とグレーテルが象徴するアニマ性(たとえば情念、衝動性)、これらが統合した強い自我が必要となるのです。

そして魔女の家の真珠や宝石は、その対決の勝利そのものを表しています。宝をもって家へ帰るその場所に、もう継母はいない。こうして、子供たちはもっとも実りのある成長をとげ、幸せにくらすのです。

ヘンゼルとグレーテルの登場人物と、その舞台となる場所の移動経過をみると、私自身の経験上の出来事や問題と連想でき、共感する部分があります。この物語を口承してきた人たちは、発想豊かに聞き手(主に子供たち)を退屈させないように、このような宗教の教えめいた物語を語り継いできたのでしょうか。それとも、飢饉のために子供を森の中に捨てたという現実に良心を痛めて、ハッピーエンドの物語(メルヘン)に仕立てあげたのでしょうか。それは定かではないですが、当時現実の世界では、森の奥深くに捨てられた子供は死ぬしかなかったでしょう。現実ではありえないことが起こるのは、メルヘンの中だけなのです。

文献
高橋義人『グリム童話の世界-ヨーロッパ文化の深層へ』(岩波書店)2006年
マリア・タタール『グリム童-その隠されたメッセージ』(新曜社)1990年
鈴木晶『グリム童話-メルヘンの深層』(講談社)1991年
Gebrüder Grimm『Mein liebstes Märchen』(Dessart)1991年
阿部謹也『物語ドイツの歴史』(中公新書)1998年
藤本淳雄他『ドイツ文学史』(東京大学出版会)1977年

2015/9/29書
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